憑依系の役者さんと、まったくブレずに同じことができるタイプの役者さんっていると思うんですけど、どっちですか?
どっちなんだろう。
あんまり憑依系という言葉に良いイメージがなくて、だから私、憑依系ではないと思っていたんですけど、最近は憑依系でいいかもって思いました。
結局、役をやっている間は、お客さんのこととか、スタッフさんのこととか、裏の周りのこととか、全部気にはしていますけど、でも演技中は、そういった思いは頭の隅に置いて、目の前の相手役と話している訳じゃないですか。
私の体は今、役のものだと考えると、イタコみたいなものかと思っていたら、憑依系でもいいなと思い直しました。
なるほど。
9-Statesの瀬畠淳って役者がいるんですけど、必殺仕事人って呼んでいて、感情がない人だと思っているんですけど、「セリフの意味が分からないんですよね」と言いながら、ちゃんと表現できてたりするので、そういう人は憑依系ではなくて、技術の人なんだろうと思います。
けど最近よくあるのが、「あそこの芝居良かったよ。どんな感じでやったの?」って訊くと、「覚えてないんですよね」って返してくるんです。
それって技量とかではなく、憑依したんでしょうね。
だから仕事人でもそうなんだなって思うので、もしかすると、誰でも憑依系にはなれるのかなって思います。
無理して乗らなくても自然に乗るのがいい気がしました。
そんな感じがしますね。
これは座キューピーマジックの演技論なので、他の劇団で通用するものかどうかは分からないんですけど、やっぱ相手役とちゃんと受け応えができると憑依していけるんですよね。
僕、お芝居はよくリアクションだと言っているんですけど、台本に書かれていること(アクション)を無理やり繋げるのではなく、リアクションとして返していけば互いに乗っていけますから。
タライ?
「互い」です。
タライに乗っていったらスゴいことになっちゃいますから。
(笑)
互いに乗っていけたら『聞く』ができるので、それが1番大事です。
若い頃からそれだけは言っていましたね。
なんかみんな頑張っちゃうじゃないですか。
だから昔は、イタズラ心もあったんですけど、二人の会話劇で片方の人にだけセリフの変更を伝えて、普通に返した時の反応を見ていた時がありました。
相手の芝居が変わった時にどうやって返すかが大事で、その時は4パターンぐらいの台本を用意して、本番の時もランダムで用意してたんです。
その4パターンは予め稽古でやっているんですけど、それを当日に持ち込むことで、俳優は相手のセリフを聞かなきゃいけなくなる。
そういう鍛え方をしていました。
今はもちろんやっていませんけど。
でも効果的ですね。
その中でリズムを守って欲しいとか、無茶苦茶なこと言ったりするんですけど、それを楽しんでやると、おそらくお芝居をやっている時とかも楽になると思うんだよね。
って話を昔はよくしていました。
その通りだと思います。
でも、その通りだったら、もっと売れてると思います。
(笑)