この本を書いたのは、アナタではない。
そんなことを言われたことはありますか?
最近は、もう一人の作家である吉崎君と週2、3回くらいのペースで会議をしているような気がします。
まあ、4月に公演があるので、現在、絶賛、台本、執筆中、テンヤワンヤ、な訳ですが、そもそも、オイラは筆が早いタイプの作家さんではありません。
しかしながら、2月にはキャストさん達が最初に集まって顔見せをする、「顔合わせ」なるものが行われるわけで、そこで初稿と呼ばれる最初の台本を持っていかないと浜田カオスが激オコ鬼に豹変するので、毎回頑張ったりはするのですが、大体、いつも鬼と出くわすことになります。
他の作家さんってどれくらいで本を書くんですかね。
今度、チャ~さんにでも聞いてみようかな。
オイラの場合は、構成含めて短くても4カ月くらいはかかったりします。
なもんで、吉崎君と毎週やっている会議はすでに11月から始まっていたりもする訳ですが、ワチャワチャ楽しい時間かと思えば、冷戦と激論を繰り広げ、3歩進んでは2歩下がるを繰り返しています。
時間をかければかける程、台本は面白くなる。
訳でもなかったりしますが、時間をかけることで整合性がとれてきたりするもんです。
出来るだけ作家都合にならないように修正に修正を加えていくわけですけが、そんな事ばっかり続けていると、整合性が取れてるからなんだよ、纏まってるからなんだよ、最終的には普通だね、なんて言われてしまう事も多々あり、逆に破綻していると、もちろん集中砲火を受けることになる為、作家はなんて報われないのだろう、と思うこともしばしばあったりするわけですが、書きたいものを好きなように書いてんだから仕方がないな~と思うことにしています。
そして、そんな感じで続けてきた、9-Statesは、今年、20周年記念公演みたいなやつを4月に下北沢駅前劇場で行います。
長いお話でしたが、もちろん宣伝です。
ね~。
作家さんって意外と大変だったりするんだよって思ったんだけど、よくよく考えたら、セリフを覚えてお客さんの前に立って演じきる役者の皆さんだって大変だし、種を蒔いて収穫して売りに出す農家の方も勿論大変な訳で、つまり、皆、大変なんだから、大変自慢なんてすんなよって話ですね。
でもね、たまには誰かに褒めてもらいたい、そう思うことだってあるじゃないですか。
そう思ってみたっていいじゃないですか。
コレは、そんなしょうもない事を思ってしまった、オイラの戒めのお話です。
それは、花粉症が収まる気配もみせることもない、ある春の公演でした。
その日は、マチネとソワレがある、いわゆる、1日2回公演の日だったのですが、昼の公演が終わり、お客さんが帰っていく中、とあるお客さんが残っていました。
その、とあるお客さんは、ウチの公演を見てエラく感動したみたいで、どうしても、この本を書いた人と会いたいと言ってくれたそうです。
そんなん聞かされたら、オイラもなんかテンション上がっちゃうじゃないですか。
なもんで、ちょっと浮かれたオイラはウキウキでその人に会いに行ったんです。
そしたら、その、とあるお客さんは、オイラと目が合うと、ジ~っとコチラを見た後「この台本を書いたのはアナタですか?」と聞いてきました。
オイラは意気揚々と「そうですっ」と返答しました。
すると、その、とあるお客さんは「この本を書いたのは、アナタではない」と言って、オイラの前から去っていきました。
アレ? 書いたのはオイラなんですけどね・・・。
なんだか、物凄いカウンターパンチをもらった気分でした。
オイラの想像の斜め上を軽く超えてきましたからね。
感情のジェットコースターとはまさにあの事です。
物語に出てくる主人公の感情ラインもこれくらいの高低差があったら面白いのかもなって勉強になるくらいでしたからね。
きっとね、実物のオイラって、そのお客さんが想像した感じではなかったんでしょうね、
仕方がないよね。
なんてこと、あるわけないじゃないですか。
現実世界でね、感情ジェットコースターになんて乗せられたら、家に帰って落ち着いた時に、知らず知らずと涙が零れてしまうわけですよ。
せっかく作品を褒めてもらったのに、物凄く複雑な気持ちになるわけですよ。
わ~~ん。
です。
やっぱりね、裏方は何処まで行っても裏方、調子に乗ってはいけないのです。
褒められたいとか思ってもロクなことはないのです。
コレは教訓なのです。
事実は小説より奇なりとはよく言ったものですが、現実も物語より酷でした。
でも、まあ、そんなことがあっても続けてるんですから、きっと、物作りは面白いのです。
4月の話はそんな「面白い」とは何だろう? みたいなことを頭の隅にずっと置きながら書き進めた物語です。
あっ、これは、宣伝ですよ。
ここまで読んでくれた、そこの、とあるアナタ。
下北沢駅前劇場でお待ちしています。
おしまい。