オープニング 世界観の説明

物語は、主人公の女教師チェンが教室で子供たちに英語を教えるところから始まります。
それから物語は遡り、2011年、安橋市へ。

いわゆるサンドイッチ回想ですね。
ここから彼女の物語が始まります。
子供たちは受験戦争の真っ只中で、全国大学統一入試まで60日という設定です。

2011年のチェンは女子高生。
彼女は同じクラス(理系10組)の女の子と一緒に牛乳を運んでいましたが、
その後、その女の子は主人公が勉強している最中に学校で投身自殺を図ります。

遺体を囲み、ヒソヒソ話をしながらスマホで写真を撮る高校生たち。
そんな中、チェンはその子に上着を掛けてあげます。
すると、それを遠巻きで見ていた何者かのスマホにチェンの姿が映し出され、そして……!

オープニングタイトル【少年の君】

この自殺のシーンの違和感というか、温度差がこの物語のテーマであり、世界観だと思いますが、これを観た時、“あいみょん”の歌だったり、石井裕也監督の「愛にイナズマ」の冒頭シーンだったり、色んなことを思い出しました。
冒頭から、いきなり考えさせられる良きシーンだったと思います。

その後、教室で自習をしていたチェンは刑事に呼び出され、投身自殺を図った女の子について何故遺体に上着を掛けたのか尋ねます。

この行動は、彼女の優しさと関係性が分かります。
彼女は他の連中とは違う立場にあり、何か大きなものを引きずっている様子です。
因みにですが、ここに出てくる刑事も大事なドラマを担っています。

チェンが教室に戻ると、座席には赤インクのシミが。
これは以前、同じようにいじめられた亡き級友が遭遇したイタズラと同じものです。
チェンは、何も言えずにただ黙って赤いインクの椅子に座った級友を思い出し、彼女の苦悩の表情を思い出します。
授業が始まるものの、チェンは赤インクの椅子に座ることができず、先生がその様子を気にかけるのでした。

その夜。
チェンの自宅では、借金の取り立て人が家に来て玄関扉を激しく叩き、チェンの気持ちを暗くさせます。

簡単に整理すると、チェンは大学受験を控えた女子高生で、友達がイジメで自殺してしまったという状況です。
チェンの自宅に借金の取り立て人は来ていますが、最下層の人ではないみたいです。
大学合格して、早くここから抜け出そう的な雰囲気が漂っています。これがこの物語の目的軸ですかね。

②セットアップ 出会い

食堂で、チェンは如何にも意地悪そうな同級生の女の子・ウェイに声をかけられますが冷たくあしらいます。
断られたウェイは、それでもニコニコ笑いながらチェンの写真を撮ると、チェンは自殺した級友も写真を撮られていたことを思い出します。

級友を救えなかったという想いが、彼女の中にしっかり残っていることが分かります。

その夜、チェンが帰路に就くと、ウェイたちに暴行を受けます。
彼女たちは警察を警戒しているらしく、聞き込みについて詰問します。

チェンが帰宅すると、そこには母親がいました。
彼女は母親に借金について口汚く罵りますが、それは決して不仲ではなく、心が通じ合っている仲間のようにも見えます。
チェンは、母親の白髪を染めながら、ダメなりにも一生懸命に娘のために生きている母の姿に心を打たれるのでした。

翌朝、母親は大きな荷物を持って再び出稼ぎに出ると、その背中を見つめるチェンは複雑な表情を浮かべていたました。

チェンは母親に自分がイジメられていることを言えません。
それは、これ以上、母親に負担を掛けたくないからです。
この母親の後ろ姿を見ると、「やっぱりちょっと言えないよな……」って気持ちになります。

その日、学校では成績順に席替えが行われており、生徒たちに更なるプレッシャーを掛けていきます。

この辺が超上手いですよね。
母親を想い、自分一人で乗り越えようと決心した次のシーンでプレッシャーを仕掛けてくるって。
完全にドSの発想です。

その夜、チェンは治安の悪い道を怯えながら帰宅していると、不良たちによってボコボコにされているシャオペイを目撃します。

チェンは勇気を振り絞って警察に通報しようとしますが、その瞬間に不良たちにスマホを奪われてしまいます。
さらに窮地に陥ったチェンに対して、不良たちはイタズラに二人にキスを強要します。
二人、一度は思い留まりますが、恐怖に堪え兼ねたチェンは、シャオペイにキスをしてしまいます。

物語が動き出すキッカケになるところです。
後半の伏線になっている「キス」が上手いですね。
おそらく、ファーストキスです。
そうあって欲しい。
その方が価値が高まるから。

TOP