【必ず殺す技と書いて必殺技】

演劇でよく言われる「リアル」って、何だろう?

日常会話をそのまま持ち込めばいいのでしょうか?

でもね、日常の会話って意外とグダグダなんですよ。

言い淀み、沈黙、話題の急転換。

舞台で、それやったら「下手な芝居」って言われちゃいそうです。

とほほ。

じゃあ「リアリティ」って、何だろう。

それは観客が「生もの」って錯覚する瞬間のことだと思うのです。

つまり、日常をコピーするわけではないのです。

なんと言うか。

舞台上には、気持ちのいいリズムが流れています。

セリフや動き、照明や音響。

全部がピタッと揃うと、観客は心地よく流れに乗れるのです。

だけど、それは作られた心地よさです。

現実の不規則さとは違ったりします。

なもんで、そこに意図的に「不協和音」を差し込むと。

その瞬間、不思議とリアルな空間を作り出すことができます。

あれ?生っぽいと。

リアルを表現したいからといって、全て、生っぽい芝居をするのはナンセンスです。

だって、飽きるからね。

違和感演出。

オイラの演出と言えばコレです。十八番です。

「リズムの崩し」によって、瞬間的にリアリティを生み出す手法です。

この魔法を使うと舞台上の視聴率が爆発的に上がります。

もちろん、使用する際には注意が必要です。

やりすぎれば、破綻するからです。

単純に役者さんが下手糞に見えたり、ミスしたようにも見えるからね。

どうも、『必殺技』よりも『十八番』って言葉の方が好きな中村太陽です。

十八番(おはこ)は「最も得意な芸・技」を指す言葉です。

始まりは諸説色々とあるみたいですが、江戸時代、七代目市川團十郎が市川家の得意演目を18種選び「歌舞伎十八番」と定めたのが始まりだそうだとか。

なんでも、「十八」という数字が武芸十八般や仏教の十八界など、当時“全部揃っている”象徴みたいだったようです。

つまり、得意な演目は最初は18個あったことになります。

いいですね、まるで技のデパートです。

オイラなんて時間貧乏で手持ちが少ないので、一つの技を厳選して鍛えるわけです。

一撃でお客さんの肝をつぶせる、まさに必殺技と呼べるように。

ただ、必殺技って、必ず殺す技なのです。

外したからと言って、二度目はないのです、だって外した時点で、すでに必殺技じゃなくなってるからね。

つまり、必殺技なんて使っていいのは一回だけなのです。

ただ、必殺技って使う人も気持ちが良いですからね。

沢山、使いたくなるわけです。

すると、全く響かなくなるのです、聖闘士である、お客さんには同じ技は二度は通じないのです。

意味がわからない人は、漫画の聖闘士星矢を読んでみてください。

車田正美先生は人生の教科書を描いてくれています。
おっと、話がそれてしまいましたが、必殺技の性質についてはわかっていただけたと思います。

芝居も一緒です。一番得意な技は一回だけ使うくらいでいいのです。

腹八分目が粋な大人の流儀です。

だって、二度目の必殺技は必ず失敗するからね。

おしまい。2026・2・15

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