昔に比べると、今は手を抜いているかもしれませんね。
僕も昔は台本に時間をすごく掛けていました。
単純に書けなかったというのもあるんですけど、どう書けばいいのか分からなかったので、勉強しながら書いていました。
今は構成も勉強したので、流れはポポポポポーンって出てくるようになり、どう書けば良いかよりも、何を書こうかという選択肢になっています。
そのため、手を抜いているのかなと思うこともあります。
新しいものに挑戦することが減ったと思うんですけど、マンネリ化した台本になっていると言われることもあります。
最初の頃は、どれも新しかったので、新鮮な世界を見ていたように感じますが、最近は『これ昔やったな』『この流れもやったな』と思うことが多いです。
けど、それをやらないと物語を構築できないので、いつもその葛藤と戦っています。
でもそれは、面白ければ良いんじゃないですか。
池井戸潤の作品とかは、同じような作品だけど、どれ見ても面白いからね。
完成度が高ければ良いと思うよ。
それよりも、逆に今の自分が9-Statesの芝居でスランプに陥っているから、それが気になります。
どんな感じでスランプに陥っていますか?
多分ね、セリフと感情が結びついてないから、芝居ができないんだよね。
(笑)。それ、本が悪いんですかね?
この間の公演とか、セリフに追われちゃって固かったもんな。
『みんなのえほん』ですよね?
どんな感じでした?
あれは今まででやってきた芝居の中で一番ダメだったね。
反省会みたいになっちゃった(笑)。
前にYouTubeで見たんだけど、脳に記憶を司る海馬ってあるじゃないですか。
そこに扁桃体っていうのがあるんだけど、ほぼ隣同士にあって。
扁桃体は感情を司るらしいんだけど、その感情に結びついた記憶はすごく定着しやすいんだって。
それと同じで9-Statesで台詞ばっかり覚えても、感情が描かれていないから定着しないの。
逆に映像の仕事の方だと感情が描かれているからちゃんと覚えられる。
つまり……。
リハビリが必要ってことですかね?
ん〜、舞台やるなら、もうちょっと楽しい役だったら良いのかな?
分かりました。
次、お願いするときは、楽しい役を。
一番楽しかった役は、認知症のお爺ちゃんの役だよね。
ワークショップ公演でやったやつ。
ケロンパスの言い訳。
そうそう。
あれは良かった。
『一尺玉の大砲:Re』をやったときも良かったって言ってましたよね。
カーテンコール終わった後に芝居をやるっていう。
あの芝居は、俺の中で9-Statesで1番良いシーンなんだよね。
確かに、あれは良いシーンでした(笑)。
あれね、あそこに俺がいたんだよね。
あの人物として。
相手役の瀬畠淳くんが、カーテンコールが終わった後、そのまま芝居が始まる時に、緊張でドキドキしている中、首領を見たら普通に立っていたので、「この人すごいなって思った」って、言っていましたよ。
どういう気持ちで、どうやって芝居を作っているのかなって。
そう言っている時点でダメなんじゃないかな?
だって、その人物が劇中でそんなこと思うはずないから。
昔、淳くんが首領に「普通に演ったらいい」と言われて、ジレンマに襲われたらしいですよ。
まあ普通と言われてもね。
舞台だと“普通”ってあまりないというか、難しいよね。
でも首領はよく言うじゃないですか。
「普通に演ればいいのに」って。
よほどカメレオン俳優で特別なことをやってるなら別だけど、普通の芝居なんだから、普通に演れば良いじゃんって思ってるだけだよ。
僕はよくみんなに『“リアル”よりも“リアリティー”』って言うんですけど、首領はリアルだと思いますよ。
リアルではないよね?
舞台でリアルは難しくない?
僕は無理だと思います。
俺も無理だと思うんで、どこか誇張してリアリティーを大事にしています。
首領は意外とリアリティーの中にリアルを入れようとしているんだと思ってました。
あんまり舞台として捉えてないからかな。
大袈裟な芝居は好きじゃないから。
首領にとって普通とは?
え? どういう意味?
僕も役者に「普通にやったらいいのに」って言っちゃうんですけど、そうすると、「普通ってなんですかね?」って訊かれるんです。
そういう意味なら、「その場に居ればいい」と言えば良いんじゃないですか。
板の上に立っていればいいと。
はい。
普通だと思いますよ。
首領と対談していると、お芝居の先生と話しているような気になりますね。
いやいや、もう最近は人には言いません。
結局自分の考えでしかないから。
それを押し付けるのは良くない。
でも今日は対談なので、そういう話がもっと聞きたかったです。
最後に首領の展望について。今、映画メインでやっていますが、今後はどうなっていくんですかね。
最終的には登場人物4、5人ぐらいで、炬燵に入ってただ喋っているような舞台がしたいですね。その上で、やっぱり有名にならないとお客さん来ないから。
そうですね。もっと有名になってお客さんを連れて来てください。
ドラマでも映画でも良いので、メインでなくても良いので、なるべくいっぱい出られれるようになりたいですね。
今後、首領の姿を観れるのを楽しみにしているので、気が向いたら古巣である9-Statesにも出て下さい。
そうですね。