原ちゃんは満足した公演ってありますか?
公演自体は褒められて、体感的にも上手くいったことはあるんですけど、役者の立場で映像を見ると、「この音、自分の理想と全然違う」とかは絶対にあります。
完全にやり切れることは、これからもないかも。
僕も作品を作る上で、協力していただいたスタッフさんはじめ、沢山の方々に感謝するのと同時に、「ここまでか」って、いつも思っちゃいます。
折角みんなが協力してくれているのに、自分のアイデアが足りなかったりして……。
後からアイデアが出てきたりすることはあるんですけど、演出家って即時にアイデアが出すことが大事で、昔、「アイデアは事前に100個考えろ」って、師匠に言われたことがあったんですけど、いつも3つぐらいしか出ないんですよ。
だから「5分下さい」って言って、稽古を止めるんですけど、その5分て、みんなの貴重な5分でもあるんで、申し訳なくて……。
もし即時にアイデアが出せれば、もっと色んなことに時間が使えるし、役者さんが持ってきた面白いアイデアにもすぐに対応できるんですけど————
……。
ハッ! また僕喋り過ぎてる!
いえいえ(笑)。
役作りで困ることとかありますか? 困った役とか。
札幌時代にやっていたのが……蛾。
蛾?
蛾人間みたいな。
半分人間で半分蛾だったんですけど、最終的に本能が勝っちゃって、好きな人を繭に包んじゃうみたいな。
あと、東京に来て、私が主人公の作品というのを劇団でやった時に、「嫌われ松子の一生」みたいな感じで、一人の人生を高校時代から描く話だったんですけど、最終的に好きな男を殺しちゃうみたいな。
最後、包丁で首を落とす役だったんですけど、その時の思いが、お芝居でよくあるじゃないですか、「愛しいから殺す」みたいなこと。
それを演出に言われて、どうすれば周りから見た時に愛しそうに殺せるのか、悩んだかな。
「お芝居でよくあるじゃないですか『愛しいから殺す』って」……ないですよ!
(笑)。
包丁持って首ガーンは、なかなかないでしょう。
けど、たまにありますよね。
サイコパスみたいに気持ちが分からないキャラクター。
う〜ん……。
彼女の中では筋が通っているんですよね。
だから、サイコパスでは……。
けど、自分のものにしたいからこそ殺すんですよね。
サイコパスじゃないですか。
だって共感が持てないもん。
でも、ずっとその男の首を持ってるという……。
つまり『ジョジョ奇妙な冒険』の吉良吉影ですね。
そうですね。愛がいき過ぎた故に、自分の手元に置いておきたくなった。
それはね……愛じゃない!
(笑)。
だって、モノじゃないんだから。
だから普段ならない感情とか、やらない行動とかがあると、「こういう感情で動く人って、どういう思考回路なんだろう……?」みたいなことで悩みますね。