シークエンス⑤ 不穏〜絶望
ケンタッキー州に到着した二人ですが、シャーリーのホテルはなんと黒人専用。
そこは、劣悪な環境でした。
白人であるトニーは、このホテルには泊まらず、別のホテルに宿泊することになります。
一人劣悪な環境に残されたシャーリー。
宿泊施設にいた黒人グループにも馴染めず、不穏な空気が流れます。
シャーリーはガラの悪い黒人に、遊びを誘われますが、適当な嘘をつきその場を離れます。
一方、トニーは家族を思いながら、ホテルの部屋でグリーンブックを読んでいると、シャーリーがバーでトラブルに遭遇しているとの知らせを受けます。
彼は急いでシャーリーのもとへ駆けつけます。
そこでナイフを突きつけられるシャーリーでしたが、トニーは銃を持っている素振りで、相手を脅し、彼を助け出します。
再び旅が始まると、コンサート会場への道中でエンジントラブルが発生。
修理のために、その場で待機することになります。
シャーリーは農作業をしている黒人たちを見つめ、同じ人種でありながらも立場の違いに複雑な表情を浮かべます。
その後、コンサート会場でのトイレを借りようとしたシャーリーですが、黒人専用のトイレということで、離れになる汚れたトイレを案内されると、シャーリーは差別に苛立ち、車に乗って宿泊していたホテルに戻り、用を足すのでした。
その後、トニーは他のメンバーから、この先も幾多の人種差別に直面するだろうと忠告されます。
またその時、シャーリーはこの過酷な深南部のコンサートツアーを、自ら組んだことが明かされますが、その理由は、まだ謎に包まれたままです。
旅の途中、拙い内容で手紙を書いていたトニーに、シャーリーが詩的な文章を伝授します。
ロマンティックな手紙をもらったトニーの妻が涙ながらに感動しています。
お互いのマイナスの部分を補い前に進んでいく感じがあり、これぞ、バディものロードムービーって感じで良いですね。
ジョージア州に到着したトニーとシャーリー。
仕立て屋さんで素敵なスーツを見つけます。
トニーは「試着しよう」と、シャーリーを連れて店内へ入りますが、なんと、黒人という理由でシャーリーは試着を断られてしまいます。
「お金ならあるのに……」
本当に辛く深刻な問題ですね。
その夜、トニーにもとにメイコン警察から連絡があります。
トニーが慌てて指定された場所へ行ってみると、そこには全裸のシャーリーの姿が。
どうやら男を買春した疑いを掛けられており、シャーリーは逮捕寸前、窮地に立たされた状態ですが、そこでトニーが警察を金で買収し、ことなきを得ます。
その後、助けたにもかかわらず、感謝しないシャーリーにトニーは怒ります。
シャーリーは、自分がゲイであるとトニーに知られたくなかったと告げ、二人の関係は、ギクシャクしたまま終わります。
ミッドポイントからの不穏からの絶望。
これまで完璧でいたシャーリーが、徐々に崩れていく中、それを見守るトニー。
とても魅力的な構造ですね。
シークエンス⑥ セカンド・プロット
テネシー州に到着したトニーは、過去の悪い友達と再会し、犯罪の匂いがする危ない仕事の話が持ち上がりますが、トニーはそれを適当にかわし、シャーリーとホテルに向かいます。
この時、注目したいのが、トニーが黒人のドアボーイに鍵を渡す行為です。
これまでトイレに行く時も、シャーリーが車にいるときは、貴重品を放置せず、持ち歩いていたトニーでしたが、ここにきて彼の心の成長が窺えます。
その後、トニーは悪い友達に電話で呼び出され部屋を出ると、そこには、シャーリーの姿。
彼は運転手を辞めてしまうかもしれないと心配していました。
しかし、トニーは悪い友達の仕事は請けずに、運転手を続けることを誓います。
これは契約の話ではなく、二人の絆を確かめ合う瞬間を表現したシーンで、心を打たれます。
その後、シャーリーはピアノを母に習ったこと、また成功までの経緯など、自身の過去について語ります。
彼は、レコード会社から「黒人のクラシックピアニストにはチャンスがない、黒人のエンターテイナーになれ」と言われ、ピアノを弾きながらタバコをふかし、ピアノの上に酒を乗せる行為を勧められたことを話します。
彼はそれに抵抗し、今のスタイルを貫いていました。
旅が深南部に進むにつれて、黒人差別が悪化していきます。
途中、雨の中で警察に車を停められ取り調べを受けるトニーとシャーリー。
警察は黒人を乗せているというだけで、二人に酷い屈辱を与えます。
最初は我慢していたトニーでしたが、ついにブチギレ、警察をぶん殴ってしまいます。
本来なら逮捕されるのはトニーだけですが、ここは差別によりシャーリーも幽閉されます。
シャーリーは釈放を求め、弁護士と話をするために警察から電話を借りると、その後、知事閣下の介入により二人は釈放されますが、この出来事はシャーリーのプライドを傷つけ、トニーへの不満が爆発します。
二人は人種差別について深く議論し、シャーリーは白人社会での黒人アーティストとしての孤独を訴えます。
その後、二人は黒人専用ホテルに宿泊することにしたトニーとシャーリー。
そこでトニーは、いつものように手紙を認めます。
これまではシャーリーに詩的でロマンティックな文章を教わっていましたが、今回は一人で書くと言います。
シャーリーが、書き終えた手紙に目を通すと、気持ちがこもった素敵な手紙になっていました。
これまで、拙い手紙しか書けなかったトニーですが、ここにきて成長(変化)が窺えます。