中村太陽
歌ちゃんの一番最初の印象は、幸が薄い!
……あれ? 全然褒めてないな……。
石井玲歌

けどそれ、芝居始めた頃からずっと演出家さんから言われてました。
未亡人みたいとか。
そんなことないとは思って、イラッとしてたんですけど。

中村太陽
けどシングルマザーとかやったら、すごく活きそうな気がする。
陰があるのに、すごく健気に笑ってる感じとか、とても良いですよね。
最初に喫茶店で会った時も、多分1割ぐらいしか本当の顔を見せてもらってないだろうなと思ってました。
石井玲歌

そんなことはないんですけどね(笑)。

中村太陽
でも、なんか素敵だなって。
陰が見えるなって。
石井玲歌

スゲー、陰っていう(笑)。

中村太陽
9-Statesによく出てくれるお嬢(※松木わかは)と歌ちゃんは、僕の中では対極にあるんですよね。
石井玲歌

松木さんに当てて書いたキャラクターは元気ですもんね。

中村太陽
これをいうと怒るんですけど、僕はお嬢をキラキラしたイノシシだと思ってて。
なんていうか、満遍ない演技を見せてくれるので。
石井玲歌

確かに。

中村太陽
もちろん、歌ちゃんも見せてくれるんですけど、若干ねぇ……なにか見えるんですよね。
後ろにフワっと陰のような。
石井玲歌

ヤバいヤバい……。

中村太陽
歌ちゃんの9-States初出演作品で主演作でもある、「点と線のオブリビオン」も、そういう役だったと思うんですけど、どうでしたか?
石井玲歌

好きでしたよ。
ただ、最初に概要をいただいた時、「主人公の要素が多くない?」って思ってたんですけど、なんとか、まとまってましたね。
紆余曲折ありましたけど。

中村太陽
どの辺で、自信がついて舞台に立てると思ったの?
石井玲歌

初の劇団で主役だったので、最初っから絶対頑張らなくちゃって思ってて。
そういう意味では、自信はあったと思います。
なきゃできないから。
あと主演って、なにかを発信するっていうよりかは、受け手だと思っているんで。

中村太陽
良い女優さんですね。
逆に考えてしまう人もいるんで。
石井玲歌

そういう意味で「点と線のオブリビオン」の時の座組は、みんな協力してくれたんで、自信は早めにあったかも知れません。
みんなが私を動かそうとしてくれている。
そんな感じがしました。

中村太陽
僕も初めて観たことない人を主演に迎えたんですよね。
それも下北沢の演劇祭で。
あの時は女優の黒崎雅さんが歌ちゃんを激推ししてて。
実は、あの時3人候補がいたんですよね。
けど、僕が個性について語ると、悪口みたいに聞こえるじゃない?
石井玲歌

そんなに居たんですか?
それは知らなかった。

中村太陽
歌ちゃんと、お嬢の友達にも声を掛けてて、もう一人がキエちゃん。
石井玲歌

おお! え? 
そうだったんですか?

中村太陽

前に劇団「座キューピーマジック」を観て、スゴい女優さんが居たってメンバーに話をしたんだけど、その頃まだ、豊島さん(※豊島歩)ともあまり面識がなくて、「紹介してください」とは言えなくて。
それで、黒崎さんに話していたら「その子よりも激推しの子がいるんだけど!」って。

石井玲歌

本当に良かった。

中村太陽
「点と線のオブリビオン」も評判良かったんですが、これまで出演された舞台と比べて、9Statesの印象は?
石井玲歌

観客として観たことがないから、なんとも言えないんですけど……。
客観視はできていないですね。
9-States自体は……親族だと思います。
親戚のおじちゃんたち。
そのぐらいの距離感。

中村太陽
なんかフワッとした回答が来たね。
因みに、9-States
に出て、「これはないわ〜!」みたいなのあります?
どの団体に出てもあると思うんだけど、ここは直して欲しい。
みたいな。
石井玲歌

あったハズなんですけど、私、直ぐ忘れるタイプなんですよね。
けど、「みんなのえほん」の時は、私のスケジュールの都合もありましたけど、もっと稽古したかったですね。

中村太陽
あれって、どの位いなかったんだっけ?
石井玲歌

3週間。

中村太陽
もうちょっと稽古したかったね。
勿論、それ込みのオファーだったんで仕方ないんですけど。
石井玲歌

2週間はしてるんですけどね……。

中村太陽

意外と語るシーンって、僕はそんなに難しくないと思ってて。
それよりは、団体で作るシーンの方が時間が掛かるじゃないですか。
けど今回、歌ちゃんの役は団体の方だったんだよね。
だから、もうちょっと時間を掛ければ、いい芝居になるというより、単純に安定するし、芝居自体を、もう少し楽しめるようになる。
単純に余裕が生まれると思うんで、そこかなと。
別にブレてるわけじゃないんだけど、雰囲気というか、緊張感や連帯感みたいなものって、スゴくお客様に伝わると思ってて。
そこが緩くなることで、緊張するところが立って見えたりすると思うんですよ。
決めるところだけ頑張ると恥ずかしいじゃないですか。
だから他のところをどれだけフワッと抜けるかっていうのが本当は大事で。
そこの稽古がしたかった。

石井玲歌

そうなんですよ。
私、抜きが出来なくて。

中村太陽

そこがやれるとね。

石井玲歌

ありがたいことに、大事なものを背負わされる役が多いので、そういう賑やかなシーンの経験が少ないんですよね。
あと、どんなに人数が出てても少人数の芝居が多いんで、「みんなでやる芝居とか、どうしたらいいんだ私は!」ってなっちゃった。
だから稽古はもっとやりたいです。

石井玲歌の
印象に残ったシーンとは……?

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