シークエンス③ 旅の始まり(承)

トニーとシャーリーは、メンバーたちと2台の車でピッツバーグへ向かいます。
品格のあるシャーリーに対し、食事中に煙草を吸ったり、途中で車から降りて小便をするなど、自由奔放に行動するトニー。
二人の性格の対比が、しっかり描かれます。
またトニーは小便のために車から離れる際、ハッとして車に置いてあった財布を手にしますが、これは、黒人に対する警戒心が抜け切れていないことを示しています。

ホテルに到着後、トニーは白人メンバーたちが女性たちと楽しく過ごしているのを見ますが、かたやシャーリーは一人寂しくベランダで酒を飲んでいます。
これは彼の社会的孤立を象徴であり、黒人であるがゆえの孤独を強調しています。

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コンサートが始まると、トニーはこっそりと会場を覗き、シャーリーのピアノ演奏に感動します。
この瞬間は、トニーがシャーリーの芸術的才能に敬意を払う重要な転換点です。

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旅が続く中で、オハイオに到着したトニーは家族に手紙を書き、その中でシャーリーについても触れます。
これは彼の感情の成長を示すもので、シャーリーへの理解と尊敬が深まっていることが分かります。

シークエンス④ ミッドポイント

車内でリトルリチャードの音楽を聴きながら、トニーはシャーリーと音楽家たちについて語ります。
シャーリーがアレサ・フランクリンを知らないことに驚くトニーですが、彼が「チェッカー、サムクック、リチャードはみんな黒人で兄弟だろ?」と、発言したことで、トニーは人種で人間を一括りにしており、無意識の偏見があることを示しています。

その後、インディアナ州でのコンサート会場に到着すると、会場に設置された汚れたピアノを目の当たりにしたトニーが白人スタッフに文句を言います。
すると男が「黒人はどんなピアノでも弾くんだ」と、馬鹿にした言い方をしたことで、トニーが激怒。
白人スタッフをブン殴ります。
この出来事はトニーの価値観が変わりつつあることを示しており、彼がシャーリーに対する尊敬と連帯感を持ち始めていることを物語っています。清々しい瞬間です。

アイオワ州に到着したトニーは再び家族に手紙を書きます。
手紙の内容からシークエンス③と比べ、トニーの心情や価値観の成長がうかがえます。

ケンタッキー州に到着したトニーとシャーリー。
ここでの出来事は、二人にとって重要なミッドポイントです。
ここでシャーリーは、前妻や家族の話など、シャーリーがこれまで語らないでいたプライベートの話を打ち明けます。
さらにここで、フライドチキンの話になり、ナイフとフォークがないと衛生的に問題があると言って食べようとしないシャーリーに対し、ガサツなトニーが無理やりチキンを手渡し、二人でフライドチキンを頬張ります。
環境や文化、肌の色の違いを超えて、一つになった感動の瞬間です。
これまで全く笑うことがなかったシャーリーがここにきて、頬を緩めます。
この感動のシーンは鳥肌ものです! チキンだけに。

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