③サブプロット(親父の漁港組合ライン & 兄とのガーティライン & 恋愛ライン)
- 自宅でルビーがガーティを家に招き、談笑していると、ガーティはルビーの兄を口説きたいらしく、手話を教えてほしいとルビーにお願いします。
- ところが、手話を教わったガーティが、リビングでくつろいでいた兄に早速試すものの、失敗に終わります。
どうやら、ルビーはガーティにわざと変な手話を教えたようです。
この辺のジョークが洋画っぽいですね。 - 音楽室で歌うことを決心したルビーは、人前でも美声を披露し、周囲を圧倒します。
観ていてとてもに気持ちの良い瞬間です。
レッスンが終わると、ルビーはV先生に呼び止められ、「次の発表会でマイルズとデュエットしなさい」と言われます。
ルビーにとって、これがピンチかチャンスか分かりませんが、二人の距離感が変わる良いきっかけですね。 - 港でルビーは兄が漁業組合に買い叩かれているのを目撃し、苛立ちます。
- そのことを父親に伝えると、ルビーと兄は、自分たちで魚を売ることを提案しますが、父親は漁業組合を敵に回すことになるため、動こうとしません。
ここで、漁業組合に対する家族のスタンスが明らかになります。
- 音楽の授業後、居残りレッスンをするルビーとマイルズですが、二人の息が合わず、先生に叱られます。二人にはまだ距離があり、自主練習をバラバラに行っていたのが原因です。
つまり、デュエットを成功させるには、自主練習も二人で行う必要があるということです。
さらに、V先生はルビーにバークリー音楽大学を推薦します。奨学金も出るので金銭的には問題ありません。
問題があるとすれば、家族のことです。これまで唯一の「耳」として家族を支えてきたルビーが遠い大学に行ったら、家族にとっては大変なことになるでしょう。彼女は葛藤します。
彼女の葛藤が始まるシークエンスです。中核の葛藤である「夢 VS 家族」がしっかりと提示されていますね。
音楽が好きなことも、家族を大切に思うことも分かるので、とても複雑な心境です。
④ミッドポイント
- 食卓でルビーは母親に合唱を始めたことを話します。
しかし、母は冗談だと思って笑うばかり。
「私が盲目なら絵を描いていたわね」と言います。
ルビーの才能に気づけないのはとても切ないですね。
もし、ルビーの美声を聞くことができれば、こんなことは言わなかったでしょうに……。 - 港で兄が父に「漁業組合との関係を断ち切って共同組合を作ろう」と提案しますが、③と同様に父親は反対します。
そんな中、兄が健常者である同僚たちに飲みに誘われると、父はルビーに通訳を頼もうとします。
しかし、兄はこれを断ります。
なぜなら、兄はルビーの力を借りたくないからです。
割と見過ごされがちですが、この兄のスタンスは、実は非常に重要な伏線になっています。
※詳細は後ほど。 - 飲み屋で同僚たちが談笑している最中、耳が聞こえない兄はいらだちを感じ、客をぶん殴ってしまいます。
- その後、店で働いていたガーティが兄に近づきます。
彼女は手話を使えませんでしたが、スマホを使って文字でコミュニケーションを取り、二人は店の倉庫でセックスすることになります。
ここで巧みなのは、ガーティがルビーがいない間にスマホで口説けた点です。
- 一方、ルビーの自宅で歌の練習をしていたルビーとマイルズがドキドキしていると、突然大きな物音が聞こえてきます。
覗いてみると、両親がセックスをしていました。
このような描写は、素人が突然とってつけたようにしてしまいがちですが、冒頭にあった活発な夫婦のため、必然性のある描写になっています。つまり、この両親ならその場でセックスをしていても不思議ではないということです。
しかも両親は、耳が聞こえないため、マイルズが家にいるとは思わなかったわけです。
恐らく、家庭内で性についてオープンに話せるほどなので、ルビーだけなら許容範囲だったのでしょう。 - その後、日が変わり、学食でルビーとガーティが話していると、隅で生徒たちがルビーの両親がセックスしていた話をしているのを聞いて驚きます。
そんな噂を流せるのはマイルズしかいないからです。
ショックを受けたルビーは学校の階段で落ち込んでいるところにマイルズが謝りにきますが、当然、すぐには許せません。
このことで二人の関係に亀裂が入ってしまいます。 - その後、漁業組合の会議室で、漁師たちが組合員と話し合っている中、父が通訳であるルビーを通じて、ついに漁業組合との関係を断ち切り、自ら魚を売ることを宣言します。
- 帰宅後の家族会議では、最大の問題が「人と会話ができないこと」であり、これにより、ますますルビーに頼らざるを得ない状況に陥ります。
この時点で、家族はまだルビーが音楽大学に行きたいということを正式には知りません。
物語的には嫌な方向に進んでいるように見えますが、ルビーはもともと独立することに賛成していたので、「家族で協力し合って、協同組合を成功させよう」という比較的前向きな雰囲気があります。