⑤ 不穏からの絶望ゾーン

  • それからというもの、家族が独立することになり、ルビーの生活はさらに多忙を極めていました。
    学業に加え、家族の通訳も務めなければならないため、その忙しさは当然のことです。
    この部分は点描で語られ、V先生とのレッスンと家業が交互に描かれることで、ルビーがどんどん疲弊していく様子が伝わります。
    また、マイルズとの関係は依然として不仲ですが、兄とガーティは相変わらず親密な関係を続けています。
  • そんな中、ルビーは、V先生のレッスンに遅れがちになります。厳しい性格の先生にとって、家業が忙しいなどという言い訳は通用しません。ルビーはこれ以上遅刻しないことを約束し、何とかその場を収めます。
  • どれだけ疲れても、ルビーは家族を見捨てません。
    ここではマイルズと家族について話をし、最後には「私は家族を守る」と宣言して去ります。
  • そんな時でした。ルビーがV先生のもとへ向かおうとすると、母親に呼び止められます。
    母親からの話では、ニュース番組で独立した事業が取り上げてもらえることになったらしく、その際に「通訳してほしい」とルビーに頼みます。まさに究極の選択を迫られる瞬間です。
  • 葛藤の末、ルビーは家族のインタビュー通訳を引き受けますが、V先生のもとへ急がないと約束を守れません。
    しかし、家族を裏切るわけにもいきません。
    葛藤が深まるシーンです。
  • 結局、遅刻してしまったルビーは、慌ててV先生の自宅を訪れますが、時既に遅し。
    V先生はルビーを家に入れません。
  • 翌日、ルビーが音楽室でV先生に会うと、「家族なしで生活したことがない」と心情を吐露します。
    しかし、V先生の怒りは収まらず、叱責されたルビーは決心し、ついに家族に自分の思いを伝えることにします。
  • その夜、自宅でルビーが音大に行きたいことを家族に伝えますが、家族は「今はまずい」と反対します。
    独立直後で、重要な時期だからです。
    このタイミングでルビーが離れると、家族は困難に陥るかもしれません。
    ルビーは両親との口論の末、「通訳は疲れた。歌が生きがいなの!」と家族に本心を明かします。
  • その夜、寝室で父と母がルビーのことを話し合います。
    彼らは、自分たちが耳が聞こえないため、ルビーに才能があるかも分かりません。
    もし早く彼女の才能に気づいてあげられれば、答えは変わっていたかもしれません。
  • 一方、ルビーが寝室で悩んでいると、マイルズからメールが届きます。
  • 翌日、港で働く父と兄。二人の会話から、ルビーが仕事をサボったことが初めて明らかになります。
    恐らく、マイルズのメールが背中を押したのでしょう。
    そして、彼女が不在の日に限って、海上監視員が船に乗り合わせる日でした……。
    ここに来て、物語は不穏な雰囲気を帯びます。
  • 時間が経過し、船内では父親と兄が海上監視員に監視されています。
  • 一方、冒頭に登場した森に向かったルビーとマイルズは、和解として湖に飛び込むなどしてデートを楽しみます。
    家族と恋人とのカットバックは、まるで甘いものとしょっぱいものを交互に味わうような感覚です。
  • 船上では、父と兄が聾者であることが海上監視員に露見し、緊張が高まります。
  • 一方、ルビーとマイルズは森で、より高い場所からのダイブを楽しみ、興奮を高めます。
  • また一方、船では沿岸警備隊からの無線が入りますが、聾者の父と兄には聞こえません。
    大ピンチです!
    結果、船は違法行為を行ったと見なされ、窮地に陥ります。
  • そんな家族たちとは対照的に、森の湖で青春を満喫するルビーとマイルズ。
    ついに二人はキスをします。
    最高の瞬間と最悪の状況が同時に訪れます。

ん〜。まさに不穏からの絶望ゾーン。
綺麗に高いところから奈落に落ちて行きましたね。


⑥セカンドプロット

  • ルビーが帰宅すると、家が大変な状況に陥っていることを知り、ショックを受けます。
    父親は「お前が来ないと分かっていたら、通訳を雇ったのに……」と、それとなくルビーにも責任があることを示唆します。
    これが口論に発展し、ルビーは泣き出します。
    この最高から最低への感情の落差が素晴らしいですね。
    非常に自然で巧みです。
  • その後、家族は裁判所から多額の罰金を言い渡されます。
    彼らは海に出なければ支払えません。
    しかし、聾者だけでは海に出られません。
    これからは、耳が聞こえる人を乗せることが条件になります。
  • 食卓で家族が今後のことを話し合います。
    父親は船を売れば罰金を支払えると話しますが、そうすると家族は大切な仕事を失います。
    耳が聞こえる人を雇えば漁に出られると言いますが、人を雇う余裕はありません。
    そんな中、ルビーは自らの夢であった音大を諦め、家業を手伝うと言います。
    まさに自己犠牲ですね。
    彼女の夢に対する情熱が十分に描かれているため、この決断は心を打ちます。
    しかし、その時です。夢を諦めようとするルビーに対して、兄が怒り、反対します。
    この行動は非常に自然で素晴らしいです。
    ④にもあるように、兄は「ルビーの力を借りたくない」という伏線があるため、この意外な行動に違和感がありません。
    そして、兄の妹思いの一面が垣間見えます。
  • その後、落ち込んでいるルビーのもとに母親がやってきます。
    母親はルビーが音大を諦めて家に残ることを選んだことに感謝しますが、ルビーは兄が反対していることが気がかりのようです。
    そんな中、ルビーは母親の深イイ言葉に心を動かされます。
  • 港で黄昏ている兄のもとにルビーがやってきます。
    兄はルビーに「家族の犠牲になるな」と忠告します。
    そして、「お前が生まれるまで家族は平和だった。とっとと失せろ」と、兄はルビーを冷たくあしらいますが、「家族のことなんかいいから、お前は自分の道を行け」という意味で、とても兄らしいセリフです。

  • 時間が経過し、ついに高校の合唱部の発表会が行われます。
    生徒たちが舞台裏で準備を進める中、客席には父、母、兄の姿がありますが、耳で楽しむ発表会であるため複雑な心境です。
    発表会が始まり、ルビーが歌うと、客席は感動の渦に包まれます。

  • しかし、家族にはその感動が伝わりません。
    無音の中で観客たちの表情を見守る父親の表情には、涙が込み上げてきます。

  • 発表が終わると、V先生が家族に明日の大学試験を受けるよう説得しようとしますが、通訳役であるルビーはそのことを家族に伝えようとはしません。
    それは彼女の優しさでもあり、とても悔しいシーンです。
  • 夜になり、家族が帰宅しますが、家には入らず一人になろうとする父親のもとにルビーがやってきます。
    聾者の父は「ここで歌ってほしい」とねだります。
    発表会の複雑な気持ちがここでつながります。
    とても良いシーンです。
    ルビーは聞こえないことを知りながらも、父のために熱唱します。
    父はルビーの喉に手を当て、振動で歌を聴こうとします。

いつもこのシーンで泣いてしまうんですが、その理由は、シナリオが完璧すぎるからでしょうね〜。
①で聾者の父親が重低音の振動で音楽を楽しんでいるシーンは、この為にあったのかと、気づかされます。
しかし、実際は振動だけでルビーの美声を完全に感じ取ることは難しいかもしれません。
このシーンは、喉の振動を通じてルビーの美声を感じ取るシーンではなく、ルビーの声を必死で感じ取ろうとする父親の愛や、娘の才能を信じようとする思いが表れているのでしょう。
このシーンが本当に好きです。

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