第一弾・ゲスト:加藤岳仁さん(ライオン・パーマ)

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中村太陽
9-Statesの中村です。よろしくお願いします。
加藤岳仁
ライオン・パーマの加藤です。よろしくお願いします。
中村太陽
今回ホームページを新しく、マガジン形式で始めまして。
加藤岳仁
最近、頑張ってますよね。
中村太陽
来年20周年なんで。
それで今回の対談企画をやってるんですけど、ライオン・パーマの20周年って、何かやりました?
加藤岳仁
凍りついてました。
多分、恥ずかしかったんだろうね。
中村太陽
(笑)
加藤岳仁
10周年の時はやった気はするんだけど。
20周年は敢えて公表しなかったですね。
中村太陽
うちは10周年の時は、記念公演と企画公演をやったんですけど、周りから「辞めるんじゃねえか?」って言われちゃって……。
加藤岳仁
えぇ……。
中村太陽
チラシに『中村太陽の最後の物語〜10年分のありがとうとさよなら〜』って、謳っただけなんですけどね。
加藤岳仁
それ、絶対辞めるでしょ(笑)。
中村太陽
ライオン・パーマって、最初にメンバー集める時どうしてました?
加藤岳仁
元々いた劇団で、笑い取りたがってた人たちが集まったら「E-1グランプリに出よう」って話になって。
oi-scaleとかヨーロッパ企画とかも出てましたけど、そこで、劇団というより男のお笑いユニットみたいなことを始めたら盛り上がれたので、そのまま劇団になった感じですね。
中村太陽
初期メンバーって何人ぐらい?
加藤岳仁
この前の舞台に出ていた石毛セブン、あの人だけですね初期メンバーは。
中村太陽
多い時は何人ぐらい?
加藤岳仁
劇団員ってなると、多分5人ぐらいですね。
照明に関塚千鶴っていうのがいるんで、役者4人で。女の子が多かったですね。
中村太陽
そうなんですか!?
加藤岳仁
皆さんもう子ども連れて観に来てますよ。
中村太陽
確かに長くやってるとそうですよね。
加藤岳仁
そんなにガッチリ劇団員はいなかったですけど、40代の男連中と年下の女の子が居て。
9-Statesさんとか見てると10年前の僕らを見てるみたい。
中村太陽
今はこんな感じですけど、旗揚げした時は僕一人で。
もともとは、サモ・アリナンズの倉森さんのところで今でいうワークショップみたいなことをやってる時があって、それに参加させてもらったんですけど、そこで、「サモアリに入らない?」って言われたんですけど、断ったんですよ。
加藤岳仁
なんで?
中村太陽
怖過ぎて。
加藤岳仁
役者で?
中村太陽
演助で。
サモアリ内でもう一つユニットを作るって話があって。
大人計画が流行ってたんで、ウーマンリブみたいなものをつくるって。
倉森さん、「演出をやるなら誰かについたらダメだよ」と言ってたんですけど、最後の「俺につけ」って言ってるんで、この人、すごいこと言うなぁ〜って。
加藤岳仁
(倉森さんって)怖い人なんですか?
中村太陽
怖いですよ。
今ならパワハラで訴えられてもおかしくないっていうか、最終的に全裸になってましたからね、みんな。
加藤岳仁
あぁ……そうなんだ。
中村太陽
(倉森さんから)「面白い格好して来い」って言われるんですけど、「それが面白いと思ってんの?」って、どんどん追い詰められて、みんな全裸になってるっていう……。
加藤岳仁
…すごいな。
中村太陽
1年間のまとめでワークショップ公演をOFFOFFシアターでやったんですけど、最初、主役をもらって。
加藤岳仁
おぉ、すごいな。
中村太陽
3週間ぐらい稽古して、半ページ数ぐらいしか進まなくて。
で、役を下されるという。
加藤岳仁
…すごいな。
中村太陽
その時はパニック障害になるぐらい辛くて。
「声が出てない」て言われるんですけど、大きな声を出すと、「大きい声を出せば言ってもんじゃねえんだよ!」って怒鳴られて、その繰り返しです。
加藤岳仁
倉森さんって芝居が上手くない人には、すごい仕打ちをしそうな人ですよね。
中村太陽
(笑)
加藤岳仁
本番を観てて思いました。
主になる人3、4人で回してて、あとは立ってるだけっていうか……。
中村太陽
次の主役の稽古は順調に進んでいくんですけど、自分と何が違うのか分からなくて。
そしたら倉森さんから個別に呼ばれて、今度は「小津安二郎を毎日観て来い」って。
加藤岳仁
東京物語とか?
中村太陽
はい。
「稽古を昼夜やって小津安二郎の映画を2本観ろ。それで自分だったらどう演出するか?」って、
討論してました。
加藤岳仁
本気だね…。
中村太陽
しかもこの時、僕、演出家を目指してなくて。
まだ役者だったんですよ。
そこから、1週間して、「演出家だったら食べていけるかもね?」って。
加藤岳仁
へぇ。
中村太陽
そこから役者辞めて演出の勉強をして。
その時、サモ・アリナンズの劇団員もワークショップに参加してたんですけど、倉森さんから「一人は全部お前に任せる」って。
そこから見よう見まねで演出して、自分がつけたところが結構ウケたりしてたんですけど、ワークショップが終わった頃に、oi-scaleの林さんから「ヒミズをやりたい」って声を掛けられて。
「多分3年、4年ぐらいでやれる」って言うんで、期間限定ですけど一緒にやりましょうって。
役者もやりたかったので。
中村太陽
ライオン・パーマは、今何年目ですか?
加藤岳仁
22年くらいじゃないかな?
中村太陽
劇団をやってて、大変だったことありますか?
加藤岳仁
取り立てて大変だったのは、主宰だからってわけじゃないけど、最初、全部自分たちでやったんですよ。資材をそのまま劇場に運んで、そこで切ったり塗ったりして。
そしたら、王子劇場の人に怒られました。
中村太陽
チャレンジャーですね(笑)。
加藤岳仁
しかもその時、たまたま舞台美術が間に合わなくて、初日の客入れまで舞台を作ってたんですよ。
大抵はできたんだけど、芝居で使うデカいUFOがまだ出来上がってなくて。
客が入ってる中、本当に泣きながらやってました。
中村太陽
「できないぃ〜」って?(笑)
加藤岳仁
泣いたの覚えてるんです。
情とかじゃなくて、物理的に大変で。
中村太陽
そういえば、ウチも王子劇場で1回ありました。
ウチはずっと美術は仁平にやってもらってんですけど、いつも以上に張り切ってくれて。
二階建ての家屋が舞台だったんですけど、二階が建たなくて。
加藤岳仁
ええ!
中村太陽
王子劇場の人に頼み込んで深夜もまるまる借りて建てたんですけど、その時はまだ仁平も日テレで働いてて、休みの時間で作ってたから大変だったんですよね……。
加藤岳仁
仁平さんとは9-Statesで知り合ったんですけど、毎回facebookとかtwitterでも「いいね」押してくれるんですよ。
良い人ですよね。
中村太陽
職人さんなので取っ付きにくい感じがあるんですけど、良い人です。
もう20年ぐらいの付き合いになります。
中村太陽
他に大変だったことあります? 役者関係とか。
加藤岳仁
それはあるでしょう。
中村太陽
(笑)
加藤岳仁
まあでも他の劇団よりは少ないとは思いますけど……少なくても9-Statesよりは。
中村太陽
どういうことですか?(笑)
加藤岳仁
9-Statesの飲み会に出た時に、みんなで台本の文句を言い合っているのを見た時、恐ろしい世界だと思ったもん。
中村太陽
(笑)
加藤岳仁
俺、あんなことされたら、次の日、稽古場行けないよ。
中村太陽
メチャメチャ言うでしょ。
加藤岳仁
「この役がこうなるの、気持ち的におかしくない?」とか、言うじゃないですか。
中村太陽
もともと僕は演出だけしたかったけど、誰も書いてくれなかったんで、独学でお芝居観ながら、みんなに訊いてたんですよね。
「これって大丈夫?」って。
その名残りで、ご意見番としてメンバーが残ってるので、今でもずっと言ってきます。
けど、確かに良い気持ちはしないですよね。
加藤岳仁
(笑)
中村太陽
うるさいな〜とは思ってますけど。
加藤岳仁
それで、みんなで作れるのがすごい。
中村太陽
理論的に話して、何故これがこうなってるっていうのを説明ができないとダメだと思ってて。
分かりやすいのが「正義」とは言わないですけど、「アンフェアな展開はダメだ」と構成の吉﨑くんによく言われます。
チャーさんはどうやって書いてます?
加藤岳仁
「海辺のメロ刑事」は、笑いはあったけど重視してないし、刑事ドラマでサスペンスなんで、脚本が良くないと話にならないと思って、初めて脚本優先で台本を書いたんですよね。
もちろんキャスティングで失敗したら、重要なセリフが言えなくなるんで、キャストさんも選びに選んだんですけど、セリフ量も結構考えましたね。
中村太陽
今後はどうなんですか?
加藤岳仁
昔より脚本重視するようにはなっているので、そんなに笑いはないのかな。
年齢的にも。
中村太陽
僕は逃げちゃった側の人間ですけど、“笑い”は本当に難しい。
僕、笑いのセンスがないですもん。
加藤岳仁
そうなの? お笑い劇団だと思ったけどな。
中村太陽
お笑いが好きな役者さんが多いだけです。
最初、すごく暗い話をやってたんですけど、下北沢に進出する時に、“笑い”がないとダメみたいなことを言われて、ちょっと笑いを入れてやってたんです。
けど、メンバーだけで“笑い”の公演をやった時に、まったくウケなくて、「やめよう!」って。
中村太陽
9-Statesは、旗揚げ当時と比べて、やっていることが変わったりしてるんですけど、ライオン・パーマは一貫してますか?
加藤岳仁
一貫はしてるかもしれないな。
強いメッセージは残さないし、そこで生きている人たちに正しい人たちはそんなにいなくて。
みんな陰があったり、悪いこと言ったりする人たちが、ただ一生懸命に瞬間を生きているのが好きなんです。
そこに、どんだけ“笑い”を入れられるか。
中村太陽
チャーさん(加藤さん)が、“笑い”で大事にしていることは?
加藤岳仁
不意を突く“笑い”ですね。
“笑い”って色んなパターンがあるので、全部駆使しようかと思ってますけど。
あと、女優さんでメチャクチャ笑いが取りたいんですよ。
今回の板本こっこちゃんもそうだけど、短パンで笑いとってもらいたいなと思ったり。
中村太陽
今回の板本こっこは、どうでした?
加藤岳仁
上手かったですよ、すごい。
最高でしたね。
中村太陽
本当ですか?(笑)
加藤岳仁
未知数だったんで。
思ったより、最高でした。
中村太陽
浅賀誠大とかは、どうですか?
加藤岳仁
僕、浅賀くんと2回ぐらい一緒にやったことがあるんですけど、昔の浅賀くんはガッチリ作りたい人でしたよね。
中村太陽
そうです。
初めてウチに来た時もそうでした。
加藤岳仁
稽古の時でも、一人で録音してるのよ。
俺たちのセリフをね。
それで多分、家で練習してるの。
中村太陽
昔はエンタメの人でしたからね。
今は違って「キッチリ決めずに、キャラだけ作って」と、お願いしてます。
稽古場で僕がバンバン台詞を変えちゃうんのですが、浅賀さんは、それに合わせて、フリーに芝居をしてくれます。
昔だったら全然違うと思うんですけど、チャーさんが演出するならどっちですかね。
加藤岳仁
9-Statesで観た時の浅賀さんって“繋ぎ役”っていうのか、いわゆる浅賀じゃないですか。
そういうポジションではない方向で、演出をつけようと思うけどね。
ちゃんと、役で目立たせるように。
中村太陽
最近気になってる劇団とかありますか?
加藤岳仁
9-Statesの舞台が終わった後、世の中の面白いと言われている劇団を観ようと思って。
ちょっとだけ時間があったんで、観に行ったんですよ。
もう大御所になっちゃったけど、劇団●●●と、劇団◆◆◆。
中村太陽
どうでした?
加藤岳仁
ピンと来なかったですね。
中村太陽
(笑)
加藤岳仁
「こんな感じなんだ〜」って。
あと、観たことがないところで興味があるのが「劇団鹿殺し」。
中村太陽
僕は「ママゴト」って劇団ですね。
ものスゴい不思議な台本を書くんで。
加藤岳仁
観たの?
中村太陽
観てないんですよ。
加藤岳仁
なんだよ(笑)。

最後に————
読者に向けて、どうやったらライオンパーマに出れますか?

加藤岳仁
基本的には出演したいと言ってくれれば、出れますよ。
中村太陽
そんなことないでしょう(笑)。
加藤岳仁
出たいっていうのは、作品を観てくれて面白いと思ってくれたことが前提ですよ。
どんな役でもいいからというなら話は別だけど、基本的に僕が描くものは、全員攻撃なんで。
チョイ役とかないから。
中村太陽
それじゃあ、ライオン・パーマに出たい人は、先ずチャーさんに「出たいです」と言っていただいて。
それからですね。
加藤岳仁
そうね。
中村太陽
(笑)
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