小津安二郎が好きということですが、どういったところが好きですか?
あたしは4つ上の姉の影響から、映画が大好きで、小さい頃はハリウッド映画が好きだったの。だからハリウッドの映画を字幕なしで観たくて留学したぐらい好きだったの。
すごい!
だから日本にはいい映画はないと思ってて、邦画を観てこなかったの。そしたら、ある時、「役者を目指すなら黒澤と小津ぐらい観ろよ」と言われたのがキッカケで観たら、どうしても黒澤映画が苦手で。
(笑)
ウソ〜?
今観れば分かるんだけど、芝居を始めて半年ぐらいの時に観て、興味が持てなくて。
さっきの黒崎さんの話じゃないけど、不条理劇から入るみたいな。
そうそう。
初っ端の印象なんだと思うけど、黒澤作品ってお金が掛かってるでしょ。
ハリウッドも掛かってますよ。
それよ。
「金掛けるなら、ハリウッドぐらい見せろよ」って、当時思っちゃって。
逆にアメリカ人は、すごく黒澤が大好きで、黒澤から学んだことがいっぱいあることも知ってるんだけど。
伝わり辛いってことですかね?
だとしたら、小津安二郎はそこまでお金を掛けていますか?って話で。
たった二人、先生と娘のシーンに時間が掛かってるかもしれないけど、一つの部屋で、ただ日常を描いたものが、日本人の心の中を表現したり、日本人の習慣や心情だったりを、たったあれだけの間の中で深く表現しているの観た時に、日本人は、これを出すべきだと思ったもん。
僕が小津作品を観た時は、カメラアングルとか撮り方が凄い斬新で、日本版のヒッチコックだと思いました。
芝居を続けていく中で、大事にしているものって、ありますか?
あたしは人間関係かも。それが1番大きいな。逆にここまで続けてきたからこそ、言えることで、結局は人間関係で繋がっていて、人間関係ができていないと決して現場はよくならないと思う。
よく言いますよね。
良い作品は良い座組から生まれるって。
やっぱ座組って、その時、その時の縁もありますけど、僕も非常に大事だなって思います。
黒崎さんは?
私はデビューしてから、大先輩の二人に「芝居への情熱を失ったら終わり」と言われたことがあって。
一人の先輩は、「お芝居を続けていく中で、売れる人はほんの一握りだけど、それを支えている人がいっぱいいるんだよね」って、話になった時に、「みんな辞めていくから。みんな死んでいくし、家族を持って辞めていくし、みんなお金がなくて辞めていく。だけどそこで、どうにか辞めないで食らいついていった奴だけが、最後に残るから。そこで残っていくと、役が回ってくるから」って。
あと、もう一人の先輩は3つの「ション」が大事って言ってて。
エモーションとか。
あと……なんだっけ?
パッションとか。
そうそうパッション、あと……。
……。
……。
……。
知らんのかい!
“大事な3つ”のうちの1つを忘れてましたね。(笑)
いっつもこれ忘れちゃうの。
しかも、もう1つも吉田さんが答えてましたからね。
(笑)
それに、さっき短く話をまとめるといった割にはだいぶ長かったですね。吉田さんは凄いコンパクトにまとめてくれたのに。
なんかそれじゃあ私が全然ダメみたいな感じじゃん!
僕好きですよ。
お喋りが長い人って、意外と気配りができる人だと思ってて。
いいよ。
そんなフォローしなくたって。
(笑)